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はじめは食品を温める事に集中して運び、次に朝の食器を片付けた。
すると、ちょうど終わったタイミングで彼女が戻ってくる。
スキニーパンツにシンプルなゆるめのシャツを合わせ、長髪のウィッグをかぶっていた。
「長くなったのに、待っててくれたんだ。オマケに、朝の食器を片付けてくれてる。」
「ちょうろでひたとこりょ、かりゃあげひとつくちのなか。」
「ぷっ・・!本当だ、口の中に入ってる。ひよこ豆のサラダにグリーンカレー、唐揚げにチャーハンにフルーツカット。どれも美味しそう。」
「シェアします?」
「そうだね。ただ量が多いから、久保君多めに食べてくれる?」
「僕、少食。」
「うーん、困った・・私もそんなに食べない方で・・。」
「じゃあ、明日のご飯の楽しみが増えますね。」
「素敵な捉え方!」
飲み物に、フルーツのピューレをサイダーで割ったものを用意してくれてから食事が始まった。
バイキングのように、僕らは小皿に少量ずつのせ自分たちのペースで取って食べていく。
その彼女の食べる姿は、とても品やかだ。まさに、大人の女性。
僕が受け持つお客様の中で、なかなかいないタイプだ。
「スカート、はいてくれないんですね。」
「・・いや、願望もないし、この髪でさえ気持ち悪いのに、それはね・・。」
「似合うし綺麗ですよ?肌が透き通るように白くてツヤツヤ。仕草も上品。雪に難しい華と書いてセツカさんって感じです。」
「アハハッ!名付けてくれるの?」
「本名が思いっきり男性名だから、凄く違和感あるので。」
「・・久保君を雇って良かった。こうやって話すだけでも、色々救われた。ご飯終わったら、バイクにのせて駅まで送るわ。」
「まだ、時間カウントしていないですよ。僕が気に入ってるなら、ゆっくり過ごしましょう。」
「えっ・・?いや、でも・・。」
「今日最後のお客様だし、いくらでもいれますよ。僕、雪華さんの側にいたいし、この後の事もきちんと楽しみたいなぁ。正直、先の事も興味あるでしょ?」
「すごいなぁ・・さすが。久保君がナンバー1なのが本当に分かる。」
そう感心しつつ、目線を外し照れ笑いをする雪華さん。僕はそんな彼女の頬を撫でてみる。本当に、艶やか。すごい気を使ってるんだろうなと、彼女の美意識に感心する。
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