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駆けつけてくれるのは、いつだって
玄関のチャイムに気付き、詩陽は顔を上げた。
突然訪れた人の気配に心臓が跳ねる。
ここに自分がいることを知らせることができない以上、助けが来るはずはない。
期待してはならない。
詩陽はそう思って、ずっと膝を抱えて涙を堪えてきた。
このチャンスを逃せば、二度とここから出られなくなるのだと思うと、否が応でも緊張は高まっていく。
詩陽はドアをジッと見つめ、息を殺した。
この部屋は玄関からそれほど離れていないため、大きな声を出せば聞こえるはずだ。
詩陽は甲斐の足音を聞きながら、両手を強く握り締めて、ドアの近くまで這って移動した。
玄関の開く音がして、小さな話し声が聞こえる。
ごくりと息を飲んで、大きく息を吸い込んだ。
「助けて!」
ドアを力の限り叩き、大きな声で叫んだ。
喉が強張っていたのだろう。
その声は掠れ、思っていたよりも小さな声だ。
悔しさから唇を噛み締め、もう一度叫ぼうとしたその時、ドアの向こうから怒鳴り声と共に何かがぶつかるような音が聞こえた。
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