駆けつけてくれるのは、いつだって

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「な、なに」 誰かが何かを叫んでいる。 低い声。 甲斐の声ではない。 まさか、と思った瞬間、詩陽はドアを何度も叩いた。 「伶弥! ここ! ここにいるよ!」 大きな音を立ててドアを叩く度に古い木のドアはガタガタと揺れるが、詩陽の力では開けることはできなそうだ。 だが、すぐそこに伶弥がいる。 ずっと待ち焦がれていた、大好きな伶弥が。 「詩陽、今、助けるから!」 叫んでいる伶弥の声ははっきり聞こえるが、甲斐の声は聞こえない。 何かを話している様子はわかるのに、内容がわからずに気持ちだけが焦る。 ドアを叩き続けていると拳がだんだん痛くなっていくが、何もできない今はどうしてもやめることができなかった。 「どけ!」 聞いたことがない伶弥の乱暴な言葉に、詩陽は目を見開き、ドアを叩くのを忘れてしまった。 耳を澄ませていると、再び何かがぶつかる音と甲斐の呻き声がした後、慌ただしい足音が近づいてきた。
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