3人が本棚に入れています
本棚に追加
話は砂の塔を出た数日前に遡る。
王都へと道を進める一行。ここ何日か、
エルミー以外には聞えぬ不可思議な声があった。
「王子よ。幼き王子よ。
お主は、囚われし兄の為に、身代わりになるつもりはないのか?
『助けてくれー。』と、夜な夜な皇太子は叫んでおるぞ。
助けられるのはお主だけじゃぞ。
おまえが、望むならば兄は返してやろう。
この国の為に決断してはどうじゃ?」
途を進む途上にも、夜眠る前にもその声は頭に直接響いてきた。
ヤトゥーの原野に進むその時、
エルミーは思ったのだ。自分などが軍を動かす事も、
空に昇らされた城の人たちも救ったりなんて出来ない。
(まだ、兄の方が。)
そう思った瞬間の出来事であった。
昇りゆくエルミーをどうする事も出来ず、
立ち尽くす黒の軍の前に、
天空より飛獣ホーク・レイドに乗る屈強なる騎士群が
ぞくぞくと
現れ出でていた。
後の世に「ヤトゥーの殲滅戦」と呼ばれた激戦が今始まろうとしていた。
天空より現れいでた異形の戦士軍は、
後に『天空の覇者』ホークラウルと呼ばれる事になる。
予兆編 了 大陸戦乱編へ
最初のコメントを投稿しよう!