第十二章

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 俺の、むすめ、なんだよ、な。  沢渡に全てを打ち明けて、俺はどうしたらいいのかを相談したかったのだが、打ち明ける勇気が湧かなかった。  ああ、どうしたらよいのだ。  お前は何をためらっているのだ、早く話せ、他に誰か相談できるの者がいるのかと頭の中のどこかで声がする。  沙羅よ、お前は俺を試そうとしているのか。そう思わずにいられなかった。 「壮介よ」  なに、と応える。沢渡は結構飲んでいるにもかかわらず、真顔だった。 「黙っていてくれと言われていたけどよ、お前が煮え切らないから言うよ」 「だから、なに」 「沙羅はなあ、いつだったか、義父の政治パーティに夫婦で参加したんだと」 「ん、で?」 「クラウンホテル。わかるよな」 「そこは俺が勤務しているホテルだよ。県内市内の有力な政治家は大体あそこでパーティやるね。あとはスターライトホテルとか」 「沙羅はパーティの時に、そこでお前を見つけたんだと」 「え?」 「で、いろいろ考えて、偶然を装って、再会したっていうことだそうだ」 「はあ」  すべては沙羅が仕組んだシナリオ。俺は沙羅の手の平で踊っていたということだ。
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