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リュウゼツランが英語でセンチュリープラント、百年草と呼ばれるのは、開花までに数十年要するものがあるからだ。
高校1年の時、結飛人のクラスがこの植物園の清掃活動をした際は、長い葉っぱがウニのように生えているだけの地味な草だった。そのウニもどきも育っていればサイズに驚いたかも知れないが、幅はせいぜい1メートルだった。日下がいなかったら存在に気づかないで終わっただろう。
それが、今やブラキオサウルスか。
日なたのベンチに座った結飛人は、山と青空を背景にたくましく伸びた花茎を見上げる。真ん中より上には、チアリーディングのポンポンを持った手のようなものが、右に左にニョキッと生えている。そんな、人の頭くらいはありそうなポンポン――花の固まりが十数個。馬鹿馬鹿しいほどに豪快な花だ。
こんな花だったんだな、と感慨を覚えつつ、結飛人はリュックからミニボトルと紙コップを取り出した。
「日下も一杯どう?」
「本気か?」
非難めいた声に一笑する。少し離れて座っている日下との間に紙コップを2つ並べ、ボトルの栓をポンと抜いた。
「何で酒なんて……」
「これ、うちの会社で作ってるんだよ。ある種の営業だね」
片方のコップが、ほんのり黄金色をした液体で半分ほど満たされた。結飛人は遠慮なくそれに口をつけた。口当たりのいい果実酒だ。芳醇な香りが鼻いっぱいに柔らかく広がった。
日下はそんな結飛人の様子を大きな目で眺めている。その視線の意味は分かっていた。気づかない振りをしてボトルを差し出してみると、日下はためらったように見えたが、大人しくコップを手に取った。
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