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日曜日、私は朝から翔の部屋にいる。いつもと変わらず執筆をしていた翔が夕陽が差し込み始めた事に気づきバイトの準備をしている。
台所でコーヒーカップを洗っている私を呼ぶ翔。手を拭きながら翔にちかづくと。
「別れよう」
「えっ?」
「他に好きな人が出来た。ごめん」
「・・・・・・」
「鍵はポストに入れて行って」
翔は私の顔を一度も見る事はなく部屋を出て行った。
私は今起きている事が理解出来ず。崩れる様に床に落ちた。
時間なんかわからない、何時間経ったのだろう。部屋は暗闇に包まれ、通りすぎる車の間隔も疎らになった時、初めて涙が出た。
街灯から漏れる光が壁にかかったスーツを照らしている。私はそのスーツに向かって問いかけた。
「『急用だから』傷つける嘘はつかない、大切な人の為の嘘は嘘ではない。そう言ったよね?あの嘘は翔にとってどっちの嘘?」そのうちに外が白み出した。
「翔が帰って来る前に部屋を出なきゃ」
それだけを思って部屋を出た、鍵がポストに落ち、寂しげな音がマンションの通路に響く。
私は始発に乗る為に駅に向かって歩き出した。
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