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あの日から何日経ったのだろう私の心は空洞になり会社にも行けないでいる。
スマホがバイブしている。削除し忘れた翔の作品の投稿サイトから新作の通知が来ている。
「翔、ちゃんと書いているんだね、私もちゃんとしなくちゃね」
翔とは会えなくなったけど、わたしは翔が書く物語が好きだった。このサイトはそのままにしておこう。いちファンとして翔を見守ろう。そしていつか大きな賞を取った翔を見届けたい。出来ればあのスーツを着た翔を…。
私も歩き出さなきゃと思った時、下の階から私を呼ぶ父の声がする。返事をし、リビングに降りると父と母が座っている。
父が話し出した。
「茉莉奈、会社を任せたい青年がいるんだ。会ってみてくれないか?」
「えっ?」
私は一人娘、父と母の様に会社の為に いつかこの日が来るとは思っていた。翔がいたらそれは家を出てでも断る気でいた。
父は続けている。
「体調が悪く会社も休んでるだろ?ここは気持ちを切り替えて一度会ってみてくれ、誠実でいい青年だ。きっと幸せにしてくれる」
父の言う幸せ…嘘を道具に使って取り繕った幸せ…。
でも、翔がいなくなった今、私はその幸せを選ぶしかないのだと…。
「わかりました。お任せします」
母は安心した顔で私を見ている。
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