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家に着いた。暫くベッドの端に腰をおろして考えている。
さっきの感情は何だったんだろう…。本屋で見掛ける様になってから気になっていた。あの目が好きだった。その目で見つめられた時金縛りにあったかの様に、そして時が止まったかの様に私の体も思考回路も停止した。
「茉莉奈、ご飯の用意出来たわよ」
珍しく私より早く帰った母が呼んでいる。
ご飯を食べている間もずっと彼の事が頭から離れない。
何故毎日夕方本屋にいて同じ本を少しずつ?夜のコンビニ…。
私は何かわからない衝動に駆られ席を立った。
「ご馳走さま!」
「えっ?まだ残ってるわよ?具合でも…」
母が聞いている。
「違う、大丈夫」
部屋に着き本棚の本を探す。
「あった!」
ードストエフスキー・罪と罰(上下)ー
彼がいつも読んでいる本だ。
私が読んだ時、難しくて何度もページを戻しながら読み、やっと読み終えた本だった。
「明日、彼に持って行こう」
そう思うだけで目眩がする位心臓が早く動くのがわかった。
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