62人が本棚に入れています
本棚に追加
「お待たせしました。シュガーとミルク…わからないんで持ってきました」
丁寧にテーブルに置いてくれた指が綺麗と見とれてしまった。慌てて我に返り
「あっ、すみません。それよりお邪魔しちゃったんじゃ…」
と、もう一度スマホに目をやる。
「あっ、これですか?」
「はい、大事な方にメールでもしてたらと…」
「はは、彼女ですか?いませんよ。だって僕毎日ここにいるでしょ?」
「そ、そうですよね?はは」
まだ緊張がとれないのか私はしどろもどろの返答しか出来ない。
「執筆です」
「執筆?」
「はい…web小説に投稿しているんです」
それから彼は今までに何回か賞を取ったこと。昨年まで心理カウンセラーとして病院勤務をしていたが体を壊し辞めた。それを機会に前から続けていた執筆を本格的にやってみようと、生活の為、時給が高い深夜のコンビニバイトをしてる事、ギリギリの生活なので、本を節約するのに毎日1ページづつ読んでは返していた事を話してくれた。
「そうなんですか、今お身体は?」
「薬は飲んでますが大丈夫です。あっ!」
「へっ!」
私は驚いて変な声が出してしまった。
彼は笑いながら。
「お名前、聞いてなかったですよね。教えていただけますか?僕は原田 翔です」
「保土田 茉莉奈です」
「茉莉奈さん…。何かぴったりの名前ですね?僕は本を読んでいる時、貴女が前を通る時はわかってたんです。香水ではない、シャンプーなのかなと言う薫りがしてました」
「やだ!恥ずかしいじゃないですか」
だんだん気持ちも解れて会話も弾む様になった時、彼は時計をチラっと見て。
「すみません、バイトの時間なんで…又良かったら声かけて下さい。毎日ここにいますから」
「はい!知ってます」
お互い笑い合って店を出た。
最初のコメントを投稿しよう!