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とうとうその日がやってまいりました。
かぐや姫が月からの使者に伴われて、この国から永遠に去って行くのです。
育ての親である老夫婦は嘆きましたが、一方では宿命として全てを受け入れていました。
育てていただいた御恩は忘れませぬ。
かぐや姫は玉を転がすような声で礼を述べると、使者の待つ、ぼんやりと光る丸い乗り物に移られました。
かぐや姫が乗られると、その光は急に強くなり比類なく輝きました。
すると不思議なことに、百二十年に一度だけ開花するといわれる竹の花が、一斉に花開いたのです。
かぐや姫の乗る丸い乗り物は、強い光を放ちながら宙に浮かぶと月に向かって、彼方へと飛び去ってしまいました。
その不思議な乗り物が点となり、見えなくなってしばらく後の事です。
十五夜の月の真ん中が強く光り始めました。光は次第に丸く大きく広がっていき、遂には月全体を覆う光の花のようになりました。
それに呼応するように、地上にある竹の花々も強い光をたたえ始め、あたりを真昼のように煌々と照らしました。
そして光が絶頂に達したころ、ふっと全ては消え去りました。
見上げると、何もなかったかのように、月は美しい十五夜を見せていました。
気がつくと薄ぼんやりと光る竹の花が夜空に舞い散っていきました。
こうして人々はかぐや姫に永遠の別れを告げたのです。
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