こんにちは、さようなら

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こんにちは、さようなら

 ある町に、一人の魔法使いがいた。その魔法使いは腕が良いと地元で名が知られていた。  しかし、この世界に魔法使いはごまんといる。  魔法使いは魔法が使えた。ただそれだけだったが、本人は特別な力を持っていると誇りに思っていた。  魔法使いが薬屋を開いていたある日のこと、客が全く来なくなっていることに気が付いた。何故だろう。そう思った魔法使いは聞き耳をたてる。すると、一人の人間の口から、店に対する悪い噂が流されていたのだ。  噂は止まることを知らず、次から次へと広まっていく。  終いには、自分の店に来ていた客は隣町の魔法使いの薬屋に行くようになった。  何故、自分の店の悪い噂が流されたのか。気まぐれな男が面白半分で広めた、それが真実。しかし、魔法使いの耳に真実が入ることは無かった。  窮地に支えてくれる家族や友人もおらず、徐々に誇りの魔法を失った魔法使いは、ただの人間になった。  さようなら、魔法使い。  一人減ろうが、何も変わらない。
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