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キッチンクロス
「美晴ちゃん? それひょっとしてキッチンクロスじゃない?」
親友の奈緒に言われ美晴は手元を見た。
「え? キッチン……クロス?」
美晴はハンカチをまじまじと見つめた。確かに裏は真っ白でハンカチより少し厚手だ。
「それ家で使ってるテーブルフキンとそっくり……」
「あっれー? きっとお母さんが間違えて私のクローゼットに入れたのかも」
(お父さんのばかぁ! )
「美晴ちゃんのお母さん、忙しいのに家事もやってるの? 凄いね」
奈緒は感心してる様子。
「でも、このキッチンクロス、よく考えると吸湿速乾だからハンカチに良いかも。柄も可愛いし私もそれ使おうかなぁ」
奈緒の笑顔に美晴はこっそり息を吐く。
奈緒が天然で良かった。これがおしゃべりの風子なら、お構い無しに噂を広めるだろう。美晴は想像しただけで冷や汗が流れた。
おもむろに顔を拭ったがハッとして急いでハンカチならぬキッチンクロスを制服のポケットにしまった。
(帰ったらお父さんに文句言ってやるんだから!)
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