第5話 最強の片鱗が垣間見えて

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───それは、奇しくも遠い過去の自分が抱いていた夢と同じだった。 『世界を救う騎士になりたい』。幼少期の戯言だったかもしれない、だけどその時リュードは確かにその夢のために努力してきた。 もしも、まだ生きる意味があるのなら。 もしも、生きる意味がかつての夢に繋がるのなら。 とうに捨てた夢をもう一度拾い上げ、この男とともに実現してみてもいいんじゃないか?『無敵の踏破者』ですら敵わなかった『終局』を打倒出来れば夢が叶うんじゃないか? 「やる気があるなら今一度、俺と一緒に剣を持って立て」 「───。…こんな私を、本気で受け入れる気なのか…?」 「俺もセインも本気だ。マリーラは気にしてないだろうしアリッシュはわからんけど、目的が目的だけにお前の協力はあって困ることはない。説得なら俺がしてやるよ」 「私の意見を聞き入れてくれるビジョンが全く見えませんけどね…」 「つまりそれだけ本気ってことだな。リュード、後はお前次第だ」 「…………………私は、過去に償いきれないことをしてきた…」 『絶廻』の剣を拾い上げ、片膝をつく体勢になったリュードはユラシルの前で深々と頭を下げて。 「そんな私を仲間として迎え入れてくれるのなら、失った騎士の信条を取り戻し、必ずや期待に答えられる働きをすると誓いましょう」 切っ先を天に向けて両手で握るそれは、騎士が主に忠誠を誓う作法。 「───この命、『無敵の踏破者』ユラシル・リーバックに捧げます」 「堅苦しいのはいらねーよ。これからよろしくな、リュード」 道を踏み外したなら戻ればいい、それが出来るかどうかは当人の努力次第。 『安寧の番人』リュード・イブカスター。 失った信念と償いを抱え、この時をもって『未踏の開拓団』の一員となるとともに、ユラシルたちと新しい道を進むことを決意した。
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