第1章

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私は、特に相手を容姿で判断するようなことはしないけれど、あまりにもかけ離れた二つの対象を黙って信じるほど素直でもなかった。 彼女は流行りのゆったりとしたコットンのスカートを履き、白いレースのトップスを合わせていた。 特に、目を引くような服装ではないが、それ以外に目立つのが、べたついた髪の毛だった。 まるで、何日間もお風呂に入っていないかのような、ペッタリとした髪の毛で、その見た目が爽やかな服装から感じられるはずの清潔さを全て消し去っていた。 もしかしたら、これも流行ってるヘアオイルの塗りすぎとかなのかな、と思った。 「あーそうなんだ。私もイギリス好きで、家族で旅行するのにいつもロンドンとかスコットランドに行ってたんだよね。イギリスのどのあたりに住んでたの?」 グループのうちの、私の後ろの席の子が前のめりになり、質問する。 その表情から、葵の発言の真偽を問う勢いを感じた。 その時、葵の眉がつり上るのを見た。 「あー…。すごい田舎の小さな町だったから、言ってもわからないと思う。」 ボソボソと、言い放つ。 「そうなんだ。でも私ぜひその町の写真とか見て見たいな。もし素敵なところなら、次の家族旅行で行って見たいし。」 次々に、その女の子は畳み掛ける。 「今のスマホには写真が入ってないから、また後でね。」 目を合わせることなく、早口で葵が答える。 「そっかあ。残念。」 気まずさから、残りのクラスメイトと私は目配せをする。
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