第1章

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「でも、帰国子女ってことは英語もできるってことだよね。すごーい。」 感情のこもっていない声色で、その子はさらに葵を煽るような発言をする。 「ま、まあ…。一応ね。」 照れたように、答えるその姿がまた異様で、私たちを混乱させた。 耐えきれなくなった別の子が、話題を切り替える。 「この授業そんなに単位取るの難しくなさそうだし、よかった。他にも楽単って言われてる授業、結構先輩から教えてもらったんだよね。」 「そうなの?でも抽選のもあるし、まじで運だよねー。私が入れられた、一般教養のクラスなんかさー。」 みんなの興味が講義選択に移ったとき、葵はさぞ安心しただろうと思い、彼女の顔をちらりと横目で見ると、意外にも悔しそうに唇を噛み、退屈そうに足元を眺めていた。 一体彼女は、何を考えているのだろう。 それが私と彼女の初めての関わりだった。
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