第2章

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先輩に促されるまま、席に着く。 私と話しかけてくれた子は、横並びの角の席に案内された。 目の前には、サークルの代表とその友人が座っていた。 いかにもやんちゃそうな雰囲気を漂わせていて、少し緊張する。 「えーっと、今日は来てくれてありがとう。名前なんていうの?」 「高宮悠です。」 「おーおっけ。じゃあ、ゆうちゃんね。」 ニンマリと笑うその顔を見て、あーこのサークルには入りたくないなと思った。 「お友達は?」 「あ、私は佐倉香奈子です。よろしくお願いします。」 「んーじゃあ、かなちゃんだ。」 「あ、はい。」 少し頬を染めて香奈子がお辞儀をする。 「で、二人とも何飲む?」 「えーっとじゃあ、ジンジャーエールにします。」 「おいおいー!せっかく居酒屋に来て、飲まないのかよ。」 笑いながらも、すでに据わった目をしている。 「いやでも、未成年ですし。」 目を合わせないようにしていると、香奈子が私に呟く。 「せっかく先輩が言ってるんだし、合わせておこうよ。ね?とりあえず頼んでさ、水飲めばいいじゃん。」 「香奈子はそれでいいの?」 「私は…別に楽しければいいっていうか。」 「何こそこそ話してんのー。」 「なんでもないです!私も悠ちゃんも、先輩たちに合わせるので好きなの頼んでください。」 香奈子が満面の笑みで、答える。 「お、いいねー。ノリ良い子最高だよ。」 ニヤニヤと代表は隣の友人と何かを話している。 「お待たせしましたー。」 そう言って、目の前に大きなグラスが置かれた。 「これほんとジュースみたいだから、大丈夫だって。ね。悠ちゃんも飲んで。」 少しだけ口に含むと、薄まったアルコールとやけに甘いジュースが一気に広がり、気分が悪くなる。 「あーはい。ありがとうございます。」 すでに帰ろうか迷っていた私は、ひとまずトイレに行くことにした。 「あの、ちょっとお手洗い行って来ます。」 「私も行く!」 香奈子がすかさず後をつけて来る。 トイレに着くと、店の規模の割に、男女1つずつしかトイレがないことに気づく。 「一個しかないみたいだけど、私次でも大丈夫だよ。」 待たれていることが嫌で、香奈子を促す。 「え、ほんと?ありがとう!」 せかせかと香奈子がトイレに入り、ドアを閉める。 店内のざわつきと、BGMのせいで思考がうまく回らない。 その時、大きな音を立てて、誰かが階段を駆け上がって来るのが見えた。
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