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澄みわたる青色は宇宙と名付けられし空間へ続き、地表を照らすべくそのひとが創造した球体に近付くにつれ黄味帯びてゆき、しかして光る。
そのひとを見上げるため段、段と上へ広がる、集会所とされた天にも地にも際限ないこの部屋にて浮遊するその椅子は、しかし使いどもの地位を示して、狭まる下にほどそのひとの使いが詰まって座る。
円をえがき、段を成し、そのひとを中心に、上に。いつも通りのその日、そのひとによって告げられた。
「さぁ喜びなさい、あいしなさい。ついに完成した「人間」、アダムとイヴに祝福を」
そのひとの両隣に控えるは、そのひとと同じ形を許されたうえ、感情、思考を持ち得ただけでなく、血が通って心臓で生きて死に、また生まれるため宿された魂が戻ってくるという、確固たるひとつの「せいぶつ」、らしい。
対し、魔力が途絶えたさきだけぱたり動かなくなる使いらは――魔力の通る箇所だけ魔力でもって動いているだけの、まるで糸であやつるような人形、ないし「容れ物」にすぎない道具だ。それらすべては世界運営のための【役割】を持って造られており、寿命も、呼吸も臓器も必要とせず。ただ永遠に世界のために魔力を循環させるばかりこそが正しい姿、の、そう、装置。からくり。
どれだけそのひとが容れ物たちに感情を宿し、【役割】に沿うた思考を発生させたとしても。使いたちはそのひとつずつすべて、世界のために造られし歯車でしかない。
魔力回路が詰まれども弄って直せば元通り、動くのだからいいだろう。身体を著しく損傷し、結果その身から魔力があふれ尽きれども、注ぎ足せば元通り動くのだからいいだろう。
おわりのないその仕組みをもってかれらをだれが命と呼ぼう。果たしてだれも呼ばなかった。
かれら自身も、創造主たるそのひとも。命ということばに焦がれ固執するものなど、いないからだ。
使いどもは、そのひとと世界に従順な、からくり人形。いきものでは、ないのだ。
そう、いきものではなかった。少なくともその日――アダムとイヴなる初めての人間、そのひとと同じ形のいきものが生まれたのだと披露目された瞬間まで、は。
段、段と上へゆくほど広がっては浮遊する、円状の椅子。そのよりにもよって最上段から、だ、有り得ようもない。しかし確実でしたたかな、ガン、なる異音が一度、ひびいた。そのひとがほぼ真上にて使いらに語り聞かせている集会の最中、そのひとの声以外が鳴りわたるなど、異音と呼ぶほかないことだった。
ゆえに視線が一斉に、音の発生源へ向かう。見やり、なおさら使いどもは息をのむ。慎めと咎められる存在すら、そこには、天界には有り得なかった。
肩までの銀髪をなびかせる、初めて男の型として造られたそれ――ルシファーが、だれよりそのひとに焦がれ、愛し、盲目に尽くしていた男がである。下段の背もたれへと足裏を叩きつけては立ち上がり、果ては宝物庫にあったはずのうつくしい聖剣までをも右手に構え、創造主たる「そのひと」を、睨めつけていたのだから。
足をかけた下段を軸にそのひとへと飛びかかるルシファーを、数秒、だれしもが呆然眺めてしまった。そのほうけて理解が遅れただけの数秒でもって、結果論、だれしもの目に確と焼きついては深く刻まれた光景になったわけである。
ルシファーの反逆、その現実が。
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