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「僕はウオッチャーとしては全く機能していないっていう自覚はあったんだ。だから僕なりに何とかしようとあいつらに相談したんだよね。挙句、ひどい扱いを受け、恐怖と怒りがこみ上げた。そのあと、僕はわかったんだ、本当の自分を」
牧野はわたしへ顔をむけ、にたあ、と笑った。
「知りたい?」
「知りたいね」
「でないと、ここから出られないもんね」
わたしはうなずき、腹の奥に力を溜めた。
「続きを話してくれ」
「人の怒りって、メーター吹っ切ると化けるんだよ。知ってた?」
「わかるよ。わたしも若いころ、あまりの辛さにぶちぎれたことがある。誰しも経験することだろう」
わたしはわざと鼻で笑って見せた。
「先生ってさ、お山の大将しかしてきてないでしょ。僕、上から目線人生してるやつ大嫌いなんだよね」
「……確かにお山で、大将みたいなことをしているな」
わたしは自分の住まいと、雇人の静子さんを思い出した。
「藤崎さんがそういういけ好かないセンセイがくるから取れる取っていいって言ってた」
牧野は立ち上がり、ゆらりと身体を一振りした。
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