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背後に、巨大な、横を向いた蕾が出現した。わたしの視認できる空間ぎりぎりだ。それが、本のページを開くように、ぱかっと花ひらいた。
開花した花は巨大すぎて一部しか視えない。
円状の中央に穴が開き、五枚の花弁へ特徴のある斑点模様がある。
ラフレシア……?
そう直感した途端、真ん中の穴から捕食前のハエトリグサのような、淵に棘のある二枚貝の葉がシュルシュル伸び出てきた。それがぱっと左右に開き赤い内側を見せ、わたしの頭上へ突進してきた。
よける間などなかった。
わたしは頭から、ハエトリグサの葉に全身を挟まれた。
どこかで、ウイーン、と電子音が鳴った。
頭上から眩しい光が照射され、それがわたしの頭頂から順に舐めていった。
「あは、藤崎さんが言ってた通り、先生のさいのうってすごいね。人の才能が視えちゃうんだね。視えた能力をスキャンして取り込んだら僕、神じゃん!」
あの銀縁メガネ、はなからわたしの才能を奪う気だったのか。
「きみはウオッチャーではなくてスキャナーだったのか」
「そうだよ。あいつら二人を飲み込んで能力スキャンしたの。そのあとあいつら勝手に精神崩壊しただけ。僕は心の破壊までできないんだからね」
牧野は甲高い笑い声をあげた。
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