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「先生への依頼は電話で話せないものばかりなのはご存じのはず。今回も先生のその特別なお力をお借りしたいという話でして」
特別な力。
それは古来からこの国の発展に寄与してきた、先祖代々の稼業で世襲の能力。
国の発展を叶えるにはにんげんのちからだけではどうしようもないとうことを、世の中の頂点に近くなればなる者ほど知っている。その一握りの人間が失敗の許されない決断をするとき、我が一族の力を望む。わけても、一族の中でも特異な能力のわたしに。
わたしは庭で草むしりをしている静子さんに外出を告げた。山の中腹にある大門をくぐったところで、背後から鐘をつく音が響いた。わたしは眼下に広がる終わりの見えない石段を降り始めた。
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