わたしはあなたの花を視る

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「報酬はいつものようにということでよろしければ、本題に入りましょうか」  都市近郊にある指定されたビルは、初めの場所だった。そのビルの応接室でローテーブルを挟んだ向かいに座った男は藤崎と名乗った。上質な生地で仕立てたスーツを着ている藤崎は、この会社のお偉いさんなのであろう。  藤崎は銀縁の眼鏡の奥で一重の目をまっすぐに私へ向けてきた。  刹那、彼の背後に、すうっと一本の茎が伸びた。先端には小さな正方体の蕾がついている。そのふくらみが、わたしへその頭を向け、微かに震えた。  わたしはそれを視て、緩く口の端を上げた。  初対面の藤崎はわたしを値踏みし始めたのだ。  藤崎の背後の蕾はゆっくりと何度も上下に揺れた。正方体の中心部をぴくぴくさせ、弾けさせたがっているが、叶わず茎をよじらせ始めた。 「藤崎さん、あなたはわたしの能力や仕事のことを上層部から聞き及んでいるでしょう。だからそれ以上、わたしのことを詮索しないほうがいい。魂が障りますよ」  初見の人間はまず私の能力に興味を持つ。自身の人生で培ったセンサーを使って目の前の者がどんな人間なのか探ろうとするのは生存本能だろうが、わたしにはそれが利かない。  理由は簡単だ。コピー機を想像してみるといい。企画がA3までのもはA2えお印刷できない。それと同じで認知能力以上の遥か規格外の存在は認知不可能、かえってコピー機に支障をきたすことになる。善意でキャパ以上の情報を取り込もうとすると種である根幹の魂に余計な負荷がかかるのでよせ、今のように忠告をすることにしているが、コピー機のトレイに規格以上のサイズを入れたらどうなるか想像できない者は放っておく。自己責任だ。  藤崎は頬を紅潮させると、薄い口をぎゅっと萎めた。  あらかじめ知らされていても、じぶんだけが探られ丸裸にされると感じれば気持ちのいいものではないだろう。実際には、花の種である魂をあばくわけではないのだが。 「それで、わたしの仕事は?」  藤崎は小さく咳払いをした。背後の蕾と茎がかすみ始めた。詮索をやめたのだ。だが、全く消えるわけではないところを見ると、別の感覚、もしくは才能を用いるつもりと言うことだ。
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