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「このビルには、極秘プロジェクトが遂行されています」
私は黙ってうなずいた。
「その中でもトップシークレットに値するセクションがあるのです」
「それで?」
「そのセクションの人間は日本、いや、世界でも稀有な高い知能を有している者の集団で、その人材を健全でかつマックスの状態で仕事に向かえるようすべての環境を最適化しているにもかかわらず、二人、立て続けに使用不能になったのです」
藤崎の背後に、三十代前半らしい男性二人がぼんやりと浮かび上がった。
藤崎はイメージ力の強いタイプらしい。彼は話しながら自分の目で見たことを言葉に乗せるのが通常人よりうまい。霞んではいるが、茎の先の蕾がすこしほころんでいる。彼の才能のひとつだ。わたしは人の才能を、背後の植物の姿で視ている。
「専門機関より使用不可能の宣告を受けた二人が、実はそのセクションで一、二を争うほどの秀逸な人材だっただけに、我が社の利益のダウンは免れず……」
言葉を切った藤崎は、足元に目線を落とした。
「その直後、これまでセクション内では凡庸と判定されていた者の成績が急に上場したのです」
藤崎は視線をわたしへ戻した。
「優秀な人材をこれ以上破壊されるのは社にとって打撃であると同時に、プロジェクトの障害になるわけです」
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