わたしはあなたの花を視る

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  案内されたセクションは地下にあった。ビルの真下の血かフロアではなく、地下から長い廊下と夥しいゲートをくぐり歩いて着いたそのフロアは、白い壁と、黒と灰色のPCとで構成された殺風景な部屋だった。入り口で室内を見た第一印象は、学校の教室だった。社員は50名ほどか。  その社員全員を見渡せる位置に立ったわたしは凍りついた。  彼ら全員の背後に見たこともないものが現れていたのだ。  茎に相当する部分に蕾のような塊があるもの、茎と思しきものが途中でがたがたになって、皮一枚でつながったようなもの、直線の上に円が乗っているもの、もつれた糸のようなかたまりしかないもの……。  それらすべてが、平面で視えるのだ。  そんないびつな植物ははじめてだった。すべての幻視が情報としてわたしの脳内にとりこまれたところで、今度は腐臭が部屋に充満していることに気がついた。
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