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わたしの能力は幻視覚だ。幻嗅覚はほかの親族のものが得意とする。にもかかわらず、わたしの幻嗅覚にわかるほどの異臭を、社員が放っている。
鳩尾にどす黒く冷たい塊が、喉をせりあがってきた。わたしはたまらず口元を手で押さえた。
「いったい彼らは何ですか。ここで何の仕事をしている?」
「彼らはウオッチャーです。平たく言うと、世界中の情報を脳に取り込み、そこから短期中期の正確な社会の未来予測をはじき出しています」
「みんな同じ情報を見て、それぞれが予測を出している?」
「そのあたりの説明をすると長くなりますので割愛しますが、彼らの超人的な脳で立てた予測をもとに再計算するセクションがあります。そこで大筋がみえてくるわけですが、それもウオッチャーなしでは社の安定した勝利はないですね」
正確というより、100パーセント正解を導き出しているということか。それは普通の人間には不可能だ。
「彼らの才能は尋常な形をしていない。人間のそれとはまったく違う」
藤崎の目がすうっと細くなった。
「先生、彼らは生きたAIなのですよ」
藤崎は眼鏡の中央のブリッジをくい、と押し上げた。
「正式にはB(バイオ)ーAI。遺伝子操作で生まれた、社のためだけの人材です」
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