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そんなある日、小学校最後の運動会を前に、出し物のダンスの配置を決めたときのことだ。
運動会の演目は児童中心の取り組みということで、担任の先生は席を外していた。
実行委員の一人だったわたしは、他の委員といっしょに教壇に立った。
時間短縮のため委員だけで事前に仮決めした、クラス全員のダンスの配置を黒板に書き記して、「これでいいですか? なにか問題があったら変更できます」と聞いた。
その配置の中で、わたし自身は最前列の端だった。目立ちたくはなかったが、委員が率先して前に立たないと、ということで決まったのだ。
「え~、実行委員ばっか良い場所じゃん。特に木村、おまえが前に並ぶのはないだろ。おまえが目立つのはその変な声だけでいいんだよ」
わたしを指さす男子を、震える声で嗜める。
「関係ないことは今言わないでください」
「かんけぇないことわぁ~いまぁいわないでくだっさ~い」
渾身の裏声に、クラス中が笑った。男子だけじゃなくて女子までもが。
最後の行事だから良いものにしようと思ったのに、わたしが頑張ったところで何も伝わらないんだ――。
そう思うと堪らなくて、思わずわたしは教室を飛び出した。
「ちょっと男子! 木村さんに謝りなよ」と諫める声を後ろに聞きながら、わたしは廊下を駆けた。
教室では我慢していた涙が、自分が走っていく風圧で目からあふれ、こぼれ落ちていく。
勢いで出てきてしまったものの行く当てもなく、廊下の突き当たりまで来たところで何も考えずに、階段の陰に入り込んだ。
そこには見覚えのない男子がいた。
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