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「……ん?」
やはり寝ぼけているのか? 目の錯覚か? 不意に、赤紫の花弁の中央で殊更存在をアピールしている巨大な雄蕊が、風もないのに微かに動いたような気がした。
「……気のせいだよな?」
と、目を細めて呟いたその瞬間。
「…んぐ!?」
不意に触手の如く伸びた雄蕊が僕の頭に絡みつき、ノコギリ歯の生えた萼が花弁とともにすべて閉じると、まるで肉食獣が食らいつくかのように、そいつは一瞬でパクリと僕を花の中に飲み込んだ。
(謎の種 了)
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