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「あの花がひらいたらよくないことが起きる」
そう言っておばあちゃんは毎日あの丘の上の植物を見に行っていた。おばあちゃんのお母さんもそうだったらしい。
そのおばあちゃんのことをお母さんはずっと冷めた目で見ていた。そのはずだった。けれどおばあちゃんが行けなくなる少し前に一緒に行ってからはそんなことはなくなったし、おばあちゃんが行けなくなったら代わりに行くようになった。
多分おばあちゃんもそうだったんだろう。ずっとそうだったんだろう。
その心変わりに冷たい目を向けていたのだろう。けれど私はそれよりもどうして行くほどの決心をしたのか、それが気になった。
一度は聞いてみた。どうして行くようになったのか。
「時が来れば」
答えはそれだけだった。
あの丘の麓には行ける。けれどどうしても上には行けない。正しい道から正しい人が入らなければ上へは行けない。
子供はみんな一回は行ったことがある。親たちもどうせ上へは行けないことを知っているから大して止めない。戻ってこなかったということも聞かない。だから公園に行くのと変わらないくらいで扱われている。
正しい道は私の家のすぐ近く。だから何度もそこから登ろうとした。けれどどうしても上には行けなかった。正しい人ではないから。
正しい道から一番近い家が私の家だから、私の家の人が確認しに行く。正しい人というのはきっと一人ずつなのだろう。代々伝わってくる。何か条件があるのだろうか。多分お母さんとおばあちゃんが一緒に行った日に何かがあったんだろう。
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