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「……ッ!!」
そう言いながら、彼は突然私を抱き締めてきた。
あまりに予想外過ぎる彼の行動に私は戸惑うも、彼は構わず続ける。
「また同じ後悔を繰り返すところだった…だけどお前は、まだ生きていてくれて本当に良かった」
「……」
きっと彼は、まだ彼女のこと悔いているのだろう。
その言葉の重みは、聞いているだけで本当に辛かった。
彼は尚も私を抱き締めたまま続ける。
「好きじゃないと、お前を気に掛ける理由にはならないか?」
「え……?」
「俺はずっと……真実は一つだと思ってた。そしてその真実は、一生変わらないものだとも思ってた」
「……」
彼は彼女を亡くしてからも、ずっと彼女を想っていたのは間違いなく真実だ。
そしてその真実が、もし一つだけじゃないとするのなら……私は言葉を失った。
「だけどもし真実が二つあって、過去の真実も長い年月と共に変わるとするなら……本当は、お前の事が好きで堪らない!!」
「……!!」
「今でも彼女を忘れられないのも真実で、ずっと自分の本音を誤魔化してきた……それでも、気付いた時にはお前がいつの間にか俺の心の中にいる」
「……」
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