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ふと気付いた時、俺は彼女が眠る病室に来ていた。
あれから一ヶ月程が経っただろうか、彼女の表情は以前よりも更に窶れている。
俺はそんな彼女の脇の椅子に腰を下ろし、ソッと彼女の手を握り締めると、それに反応して彼女は静かに目を覚ました。
「来てくれたの……?」
「……」
多分俺は放心状態で、表情は完全な無だろう。
そんな俺の顔を見て、彼女は陰りを纏わせながらも、満面の笑みを浮かべた。
「秀平……」
「……」
そして彼女に名前を呼ばれた瞬間、俺はまるでたがが外れた蛇口のように、突然大粒の涙が溢れ出して止まらなくなった。
「泣かないでよ…秀平……」
そんな俺を励ますように彼女は優しく、今にも消え入りそうな声で口を開くが、それでも俺のたがは止まらず、彼女の腹部に額を押し当てて泣き叫ぶ。
「オアアアァアアアァァォァァ!!アアアァァォァァアアアァァォァァ!!!!」
そんな俺の頭の上に、彼女は優しく包み込むように手を添える。
「ありがとう…秀平……私…幸せだったよ……」
救いたかった、救えなかった。
救えた筈なのに、救えなかった。
「アアアァアアアァアアアァアアアァアアアァアアアァアアアァアアアァァォァァ!!アアアァアアアァアアアァアアアァアアアァアアアァァォァァアアアァアアアァァォァァ!!!!」
救えた筈だった命を救う事が出来ず、俺はただただ泣き叫ぶ事しか出来なかった。
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