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今回も彼は追って来てはくれなかった。
でも今回に限ってはそれで良かった。
それから数時間が経過した夜、私は彼に電話を掛けた。
「秀平……」
その時の私は顔から頭上に掛けて頭部の大部分を包帯でグルグル巻きにしており、涙声でどうして追って来てくれなかったのかを尋ねるも、彼は答えてくれない。
『何があった…?』
電話越しでも、彼の声に怒気が孕んでいるのがわかる。
きっと彼も、電話越しで私の異変に気付いてくれたのだろうか。
私は、私のことをまだよく思わない誰かに襲われ、そのせいで人前に出られない顔になっちゃったから包帯で隠している…と説明した。
すると彼は、"すぐに行く"と一言だけ言って電話を切り、その後本当に十数分程で来てくれたので近くの公園で合流した。
「何があった…誰にやられた?」
私の容姿に、彼も驚きを隠せなかったらしい。
頭部は目元と口元だけ露出して、それ以外は完全に包み込まれており、殆ど顔もわからない状態。
辛うじて長身スレンダーなスタイルのお陰で私だと認識は出来るんだろうけど、そんなことすら気にも止めず彼は速足で私の元へ歩み寄ってくる。
「すまない…あの後すぐに追ってれば…!!」
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