花の記憶

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 僕は、彼女のことを理解できなかった。もちろん、他人の全てを理解することは不可能だ。けれども大抵の場合、上澄みをすくい取ることはできる。例えば恋心。  彼女について僕が分かることは少ない。名前、住所、容姿。そう言った、彼女という存在に貼り付けられたものばかりだ。けれども、一つだけ彼女自身について言えることがある。  彼女は花が好きだった。  僕は、時々思い出す。僕と彼女の人生が交錯したわずかな時間。不思議と色鮮やかで、静寂に守られた高校二年生の夏。僕が持つ最も綺麗で、救い難い記憶のことを。  
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