花染めの民

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「おめでとう。ジュリカ」  ソウの穏やかな声が娘を祝福している。  娘の結婚はこの上ない喜びだが、ソウの手前、アサイはきまりが悪く空のカップに口をつけ、お茶を飲むふりをした。 「ありがと。それでね、今度の日曜、私の家族に会いに来て下さるんですって! ソウ、もちろんあなたもよ。あなたも大切な家族ですもの!」 「ああ。親方の代わりに婿を見定めてやらにゃ」 「もう! トレアはとってもいい人よ。きっと母さんもソウも気に入るわ!」 「ジュリカ。そうしたら、お前はお茶の入れ方を練習しなきゃだね」  窓から春風がさわさわと吹き入り、円卓の上にはらはら何か落としていく。  桜の花びらだ。  ジュリカは花びらをそっと手の中に包んだ。 「ねえ、ソウ。私の花嫁衣裳、染めてくれない? 桜の色がいいわ」
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