氷の中のノースランドとブルーヘヴン

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「うん、そう、そうだよ。今年はね、ブルーベリーの木、ちゃんとまだ元気だよ。このままいけば、もうすぐ咲くと思うよ。ありがとう、おばあちゃん。うん。今年はなんとか収穫できそうかな。はは、だけどやっぱり、おばあちゃんの作ったブルーベリージャムじゃないと、物足りないと思うよ。それに、ジャムが作れるまで実がなるかどうか。ああ、うん、そうだよ。ノーザンハイブリッシュ系の二品種、ノースランドとブルーヘヴン。うん、ふたつともちゃんとしっかり成長しているよ。うん、わかった。つぼみがふくらんできたら、また連絡するね。」  通信を切った私は、窓の外を眺める。さっきまで猛吹雪だった外の世界は、少しずつ穏やかさをとり戻している。けれどもしばらくはこの鉛色の空から雪の結晶が完全に降りやむことはない。その一面の銀世界を見つめながら、ふとこんなことを思った。  ああ、どこに忘れてしまったのだろう。私の本当にやりたかったことはこの雪に埋もれた氷の中に眠っているはずなのに。例えば、おばあちゃんのブルーベリー農園に移されたあの冷凍ブルーベリーの実のように。  毎日毎日、観測をひたすらにやる。それが私に課せられた任務だ。この場所の毎日の気温、湿度、そして雪が昨年よりも何センチ積もっているか、他にも何かこの場所で変わっていることがないか調べて、報告書に記入する。と言っても、この場所は気温と湿度と雪の積もり具合のほかに、年がら年中ほぼこれといった変わりばえなんてないのだけれど。
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