氷の中のノースランドとブルーヘヴン

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 ブルーベリーを育てはじめようと思ったのも、この退屈な世界に少しでも変化のあるものを持ち込もうとしたから。研究所の上層部に許可を得るのは意外に大変だったけれど、ちょっとでも心の癒やしになるのならと、過酷な任務に従事している私のためを思ってくれる人がいたらしく、やっとのことで許可が降りた。もちろん、外では育てられないので、この研究所の植物管理ハウス内で育てており、あくまで研究の一貫として極寒の環境下でのハウス栽培のデータをとっているテイなのだ。けれども他のハウス内の植物と違って、AI管理下ではなく完全なる私の手作業のみの管理なんだ。  昨年おばあちゃんから最初にもらった苗は、私のやり方がまずかったのか、それとも三日間の遠征調査で水をあげられなかったのがいけなかったのか、単にハウスの外からも貫いてやってくる極寒の気候のせいなのかわからないけれど、三ヶ月くらいたったあとに枯れてしまった。  それでもブルーベリーに毎日水をやっている日々はとても楽しかったので、おばあちゃんに連絡をしたら、また苗木を送ってあげるよ、との返事が来たのだ。輸送の関係で、こちらに配達するには準備の時間がかかるから、ブルーベリーの苗を送るのは後になる、ブルーベリージャムをいっしょに贈るから勘弁してくれとおばあちゃんは言ってたけれど、このへんぴな場所へわざわざまた送ってくれるおばあちゃんと配達員に感謝しかなかった。  忘れかけていた頃に、二代目のブルーベリーの苗木が届いた。おばあちゃんの言ったとおり、ブルーベリージャムの缶詰めもたくさんいっしょに入っていたけれど、こんなにもたくさんのブルーベリーは私一人じゃ食べきれないから、配達員や研究所の人々に配って回ったんだ。 あれから約半年、本国ではもう春まっただなかなので、ブルーベリーの花も本来なら花を咲かせてもいい頃なのに。まだつぼみもできていない。おばあちゃんには心配させまいと、ブルーベリー順調に育っていると言ったけれど。もし写真を見せてと言われたらどうしよう。ネットで探した画像でも送るしかないか。
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