9人が本棚に入れています
本棚に追加
「ここ!」
手を引く女の子についていった先にあったのは、一つのお墓――。
ここは小高い丘の上にある墓地。整然と並んだ墓石がただ静かに並ぶ――訳でもない。
墓地の周りにはひっきりなしに人が歩いている。墓の傍で、何人もの人が与太話をしている。
もう――見慣れた景色だった。
「いこ!」
女の子はそう言って、目の前の墓石に身体の重心を預けて力を込めた。だが、小さな女の子一人の力でびくともするはずがない。
私はそっと腕を伸ばして、墓石を動かす手伝いをした。
墓石がゆっくりと後ろへ動く。そこから現れたのは、下へ続く階段――。
「ありがとっ!」
にんまりと微笑んでから、女の子はまた私の手を取った。そのまま、急な階段をゆっくりゆっくりと下っていく。
別に今更、驚いたりしない。
だって、私ももう、死んでいるから。
最初のコメントを投稿しよう!