花と私と幽霊探偵

2/9
前へ
/9ページ
次へ
「ここ!」  手を引く女の子についていった先にあったのは、一つのお墓――。  ここは小高い丘の上にある墓地。整然と並んだ墓石がただ静かに並ぶ――訳でもない。  墓地の周りにはひっきりなしに人が歩いている。墓の傍で、何人もの人が与太話をしている。  もう――見慣れた景色だった。 「いこ!」  女の子はそう言って、目の前の墓石に身体の重心を預けて力を込めた。だが、小さな女の子一人の力でびくともするはずがない。  私はそっと腕を伸ばして、墓石を動かす手伝いをした。  墓石がゆっくりと後ろへ動く。そこから現れたのは、下へ続く階段――。 「ありがとっ!」  にんまりと微笑んでから、女の子はまた私の手を取った。そのまま、急な階段をゆっくりゆっくりと下っていく。  別に今更、驚いたりしない。  だって、私ももう、死んでいるから。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加