嘘つき

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 今は四月の終わりだ。もうすぐゴールデンウイーク。早紀はバスケ部だがゴールデンウイーク中は部活がない。旅行に行く子が多いからだ。顧問も温泉に行くと言っていた。早紀は何の予定もないので羨ましかったがトンネルの近くでキャンプは嫌だ。 「男の子に臆病って言われてもいいもん。憑かれたらどうするの?」 「早紀、幽霊なんて信じてるの?」  信じてなくてもそんなところで泊まるのは誰だってゴメンだろう。美瑠は何で平気なのか。あっけらかんとした性格だからなのか。  このクラスは男女が交互に座る席の配置になっている。男女合わせて三十名。早紀は自分の席で。美瑠は男子の席に勝手に座ってにこやかに話している。窓の外には山が見える。幽霊が出るトンネルのある山。早紀は昼間にお父さんの運転で通ったことがあるが、昼間でも薄暗くて気味が悪かった。そんなに長いトンネルではないが必死に恐怖と戦った。  話が終わらなかったがお昼休みが終わった。各々が自分の席に着く。五時間目は英語だ。バスケ部の顧問が英語を教える。四十代の先生だ。  授業が始まると、ゴールデンウイークの予定を英語で言うように言われた。先生は「私は、温泉に行って一泊して来ます」と英語で言った。美瑠が指される。笑顔で「友達とキャンプをします」と言った。早紀は何て言ったらよいか悩んだ末、美瑠と同じことを言った。「私も山にキャンプに行きます」先生は目を細めて微笑んだ。
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