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7時にお父さんが帰って来た。お父さんは税理士事務所で働いている。車で一時間かけて遠い街まで行く。早紀は洋服を買うときしか街に出ない。それでも都会はワクワクする。こんな山間の町なんか面白みがない。
お父さんはTシャツになるとソーダ水を出してウイスキーでハイボールを作った。こう見ると美味しそうなのだが以前ちょっとだけ味見をさせてもらったらアルコール臭くて辟易した。早紀はお父さんの横に座る。太い首の喉ぼとけが好きだ。じっと見つめる。バスケ部の顧問もカッコいいけどお父さんも素敵。
お母さんがキッチンから大声で言った。
「夕飯、エビチリとチョレギサラダでいいです?」
「ああ、いいよ。つまみも何か欲しいな。卵豆腐があったっけ」
「はい、はい。座ったらお尻に根が生えるんですね。ま、働いて来てくれた人に文句は言えないですけど」
お母さんも仕事をしているが一日五時間のパートだ。駅前の薬局で働いている。薬剤師だから給料はいいと聞いた。だから早紀は同じ年の子より多くお小遣いをもらっている。バイトもしないで済んでいた。もっとも働く場所なんて限られているが。
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