嘘つき

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「キャンプに行こうよ。私のお父さんがテントを買ったの」  早紀(さき)と同じクラスで仲がいい美瑠(みる)が言う。二人でキャンプをしても詰まらないだろう。大抵キャンプは大勢でするものだ。林間学校とかもそうだった。皆んなでキャンプファイヤーをやった覚えがある。早紀はそう思って訊いた。 「それって二人で?」 「うん。テントは三人しか眠れないもの。もう一人誘ってもいけど女三人ってなにかともめるじゃない。北の方角に幽霊が出るトンネルがあるでしょう。その近くで一晩過ごしてみない?」  早紀の住んでいる家の近くにはたくさん山がある。そこの中の高い山にトンネルで子供連れの女の人が現れると学校で噂だった。早紀は高校二年生になったばかりだ。百歩譲ってキャンプはいいとしてトンネルの近くは嫌だと思った。心霊スポットは行かないほうがいい。  今はお昼休みだ。かつ丼を食べて学食から帰って来たところ。お腹がいっぱいで皆んな眠たい。だが早紀はキャンプの話で目が覚めた。美瑠は続ける。 「心霊写真を撮って男子に見せようよ。普段、女子は臆病だってバカにされてるんだもの」  早紀は首を横に振った。トンネルに出る幽霊は小学生の子供を連れてトンネル内で故障した車から外に出たときに車に撥ねられたのだという。女の子の方は苦しんで死んだのだと先輩が言っていた。そんなところの近くで一晩過ごすなんて考えらえない。
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