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天使ですか?
学生時代、男子がバレンタインデーに「女子からチョコレートをもらえるのだろうか?」とソワソワしている一方で、俺は男子からチョコレートをもらいたい、もしくはあげたいと思っていた。
そんな事を何故だかふと思い出した。
振り返れば、味気ない人生だった。
本当の事を隠して、小さな嘘を積み重ねて、他人を傷つけないように自分の気持ちを胸にしまって、平気なフリをして、自分を騙して…そうやって生きてきた。
歯がゆさと苦しさが同居したような想いを常に抱えていた。
そして生涯の幕を閉じた。
ここは天国だろう?
だって、こんなに青々とした空に、エメラルドグリーンの海。
仰向けに横たわった俺の体にやわらかい風が吹き抜ける。
27歳か…もう少しくらい長生きしたかった気もするなぁ…。
それにしても、天国ってハワイみたいな場所なんだな。
「何、1人でブツブツ言ってるの?」
「へ?」
真上から突然声をかけられ、俺は驚いて体を起こした。
そこにはブロンドショートヘアの小柄で美しい少年がいた。
「天使か…?」
俺は思わず問いかけた。
「ぷっ、ははは…!」
天使は俺の一言を聞いて可愛らしく笑った。
「僕は天使じゃないよ。それにここは天国じゃない。だって僕は人間だし、ちゃんと生きてるからね。」
天使は笑いを堪えながらそう言った。
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