元の世界

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元の世界

「あれ…ここ…」 突然視界がブラックアウトし、気付いたら、自分の部屋のベッドに寝そべっていた。 「本当に帰ってきたんだ…。」 俺はゆっくりと起き上がった。 二日酔いのように頭がガンガンと痛かった。 手元にスマホがあった。 2週間ぶりに手に取るスマホ。 日付を見て驚いた。 「日付、変わってない…。」 向こうの世界に行く前の日にちのままだった。 俺が新宿で酔いつぶれて記憶をなくした時から、たったの数時間しか経過していない。 驚くことに、向こうでの2週間は、こっちの世界では、ほんの数時間だったみたいだ。 そういえば服装もあの日のままだ。 「新宿から家までどうやって来たんだろう。」 俺は1人呟いた。 不思議だったけど、どうでもよかった。 今日が休日であることを確認すると、俺はフラフラと立ち上がり、シャワーを浴びた。 ゆっくりと服を着替え、何となく外に出た。 「さむっ」 そういえば、こっちの世界は冬だったな、と俺は小さく笑う。 呆然としたまま、電車に乗った。 海が見たかった。 冬の早朝だから、海辺に人はいなかった。 ルナと見た海は、もっと輝いて眩しかった。 「ルナ…」 ルナの名前を口にした途端、涙が溢れ出した。 「ぅ…ッ、くぅ…ひっく…、ルナぁ…」 嗚咽を抑えきれず、立っていられず、俺は座り込んだ。 冬の海風が冷たく俺の頬を切った。
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