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【番外編】夏の空に恋してる。② (END)
【ルナの世界】
「ルナちゃーん!誕生日おめでとう!」
スノースマイルには、お得意さん達の祝福の声がこだました。
「みんな、ありがとう!ついに20歳になっちゃった!」
僕は、みんなに笑顔でお礼を言った。
何を隠そう、今日は僕の誕生日。
みんな、こっそり僕を祝う計画をしていてくれたみたい。
いきなりケーキなんて出てくるからビックリしちゃった。
「ルナが健康に育ってくれて嬉しいよ。」
おじいちゃんが僕の肩を叩いて、そんなことを言った。
「おじいちゃんがそんな優しい言葉かけてくれるなんて、明日は雨かなぁ?」
僕はおちゃらけて言ったけど、本当は凄く嬉しかった。
その時、外から「ドーン!」という音が聞こえてきた。
「お、今日は花火の日か。」
おじいちゃんが言った。
「あー今日花火か。毎月やってるから、イマイチありがたみに欠けるんだよなぁ。」
お得意さんの1人が言った。
この街は常に温かいから、毎月どこかで花火があがる。
お得意さん達は、もう飽きちゃってるみたい。
「でも、僕花火好きだよ。ちょっと見てきたいな。」
僕は、花火が大好き。
だって、すごく綺麗だし、空に花が咲くなんてロマンチックでしょ。
浜辺に出ると、夜空を見上げた。
今日の花火はなんだか一段と綺麗で、不思議と切ない気持ちになった。
「リクの世界にも花火ってあるのかな…」
僕は、1人呟いた。
花火、リクと一緒に見たかったな。
あの日。
リクがいなくなったあの日。
寂しくて寂しくて、泣いても泣いても涙が止まらなくて…。
波が、この寂しさを洗い流してくれたらと思って、海をずっと眺めていたこともたった。
仕事中に泣き出すこともあったっけな。
でも、泣いてばかりじゃダメだって思った。
リクが僕に強さをくれた。
幸せをくれた。
好きを教えてくれた。
それに、僕の笑顔を好きだって言ってくれた。
だから、笑顔でいなきゃ。
でも、なんでかな。
今日の花火を見たら、なんだか涙が出そうになってきたよ。
僕は、花火を見ながら、想いを込めて小さく口に出してみた。
『リク、そっちの世界はどう?
僕は元気でやってるよ。
あ、僕ね、ひとつ大人になったんだよ。』
届くはずなんてないのに、届いて欲しいと思った。
願った。
願ってやまなかった。
その時だった。
『ルナ、俺も元気だよ。
誕生日、おめでとう。』
「え!?リク!?」
リクの声が響いて、驚いてあたりを見渡すけど、僕の周りにあるのは、見慣れた砂浜と凪いだ海だけ。
でも、聞き間違えなんかじゃない。
リクの声が、はっきりと聞こえた。
リクの言葉が、僕の中に深く響いてやまない。
海のように広く深く豊かに、ただひたすらに心に響いてやまない。
涙が零れそうになって、夜空を見上げた。
そして、花火の咲く空に想いを馳せた。
僕は、リクと出会えてよかった。
離れていても1人じゃないよね。
僕達は、ひとつだよね。
だって、一瞬だけど、今、確かに通じあったんだから。
「リクも、もしかして空を見上げてるのかな。」
この空がリクの世界に繋がっていたらいいな。
そしたら、同じ空を見上げている事になるよね。
ねぇ、リク。
僕、20歳になったよ。
この先、いくつになっても忘れない。
忘れないよ、絶対。
大好きだよ、リク。
END
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