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第三章 収得物
「おい!お前、起きろ。寝ながらビンタしてくるなんてすげー奴だな」
「まだ起こさないで下さい。脊髄反射的な何かかも知れません。されても仕方がない事をしたのですが……」
「また解凍し終わっていないのかもな。表面は温いのだけど。反射的に受け身を取ったのなら、まだ脈はあるかもよ」
頬を刷り寄せながら、「オレはこの個体が気にいった。他に何もいらない。後はみんな他の奴にやるよ」
オメガはかなり考えながら言う、「イプシロンの考えは了承しました。しかし難しいかも知れません。この調査で一番の収得物は彼女です。交渉の余地はあるかも知れませんが、個人の所有物にはなりません。それに彼女にも選ぶ権利がありますしね」
「なってくれねぇかな。オレのつがいに」
イプシロンはそう空に呟いた。
光が空から降り注ぐ緑の大地に、少女を抱き抱えたまま、寝ころぶ。
温かくて気持ちがいい。
外の世界ではBランクのビーストが暴れ回っていると言うのに。
時間を気にして聞く。「オメガ、後何分ぐらい?」
少し間を置いてから、「丁度、二十分が過ぎた所です」
「今、どの辺りなんだろう?」
「音が聞こえませんか?」
「わりい。オレは耳にインプラント入れて無いからさ」
「そうですか。今、上空で交戦している所です。」
「なんかする事あるのかな?」心配した素振りで言う。
手をすくめながら「今は待つことが一番得策です。出来れば彼女を守ってあげて下さい」とオメガは答えた。
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