第一章 空からの飛来物

1/1
前へ
/13ページ
次へ

第一章 空からの飛来物

空に飛び立つその時、思うのだ。 ここにはもう何も無くて自分一人だと。しかし孤独では無く、その中には母体に守られている様な心地よい安らぎがあると。 だけどそこから出て行きたい。太陽の掴める場所へ。むしろその向こうへ。 一人ではたどり着けない場所へ、誰かと一緒に行ってみたいと思った。 この先に進んで行きたい。 ここじゃないどこかへ。 東の空に尾を引く何かを発見する。火球だろうか? 隕石なら儲け物だ。レアな金属や新たな有機物、もしかしたらRNAなどが手に入るかも知れない。 「イプシロン、イプシロン、聞こえていますか?高度がかなりオーバーしています」 気持ちよく空想していたのを、アラームと無線の音で現実に引き戻された。 ここには空想する自由すら残っていない。 「はい。オメガ。ごめん」 「いいえ。何ともないのであればいいのです。私は東に向かって15度のK地点上空に飛来物を発見しました。どうしますか?」 「ああ、それは、オレも見つけた。結構でかい奴だろ?」 「ええ、そうです。私はこんなに大きなものを見たのは始めてです。現地の様子が砂塵でよく見えない。近づきますか?」 「いいね。一番乗りだ」 アクセルペダルを勢いよく踏む、ジェット燃料が噴出し、加速する。 この瞬間が大好きだ。スピードに乗っていて身体に重力がかかると生きている事を実感する。 砂嵐の向こうに現れたのは、大きな船団だった。有人か無人かは分らない。赤外線センサーで中を調べる。一つの生命反応があった。 人なのか動物なのかはわからない。人だったらどうしよう?僕ら以外の人を見た事は今まで無いのだ。 よく見ると、船団にビーストが気づき、喰らいつこうとしている。奴らに持って行かれてしまうのか。 「飛行物体にビーストが寄生し始めています。中に物資や生命反応がありますが、どうしますか?私は救出したいと思います。このクラスのビーストならシューティングスター一機でもなんとか撃退出来そうです」 「了解。オレもその方向で」 今回の敵はBクラスのビーストなんとか行けるだろう。それには同意する。鋭い爪と大きな尾が少しやっかいだ。何度も旋回をしながら、オメガの銃口に調節する。左の胴体をやられる。鈍い痛みとガソリンの匂いがした。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加