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第一章 空からの飛来物
空に飛び立つその時、思うのだ。
ここにはもう何も無くて自分一人だと。しかし孤独では無く、その中には母体に守られている様な心地よい安らぎがあると。
だけどそこから出て行きたい。太陽の掴める場所へ。むしろその向こうへ。
一人ではたどり着けない場所へ、誰かと一緒に行ってみたいと思った。
この先に進んで行きたい。
ここじゃないどこかへ。
東の空に尾を引く何かを発見する。火球だろうか?
隕石なら儲け物だ。レアな金属や新たな有機物、もしかしたらRNAなどが手に入るかも知れない。
「イプシロン、イプシロン、聞こえていますか?高度がかなりオーバーしています」
気持ちよく空想していたのを、アラームと無線の音で現実に引き戻された。
ここには空想する自由すら残っていない。
「はい。オメガ。ごめん」
「いいえ。何ともないのであればいいのです。私は東に向かって15度のK地点上空に飛来物を発見しました。どうしますか?」
「ああ、それは、オレも見つけた。結構でかい奴だろ?」
「ええ、そうです。私はこんなに大きなものを見たのは始めてです。現地の様子が砂塵でよく見えない。近づきますか?」
「いいね。一番乗りだ」
アクセルペダルを勢いよく踏む、ジェット燃料が噴出し、加速する。
この瞬間が大好きだ。スピードに乗っていて身体に重力がかかると生きている事を実感する。
砂嵐の向こうに現れたのは、大きな船団だった。有人か無人かは分らない。赤外線センサーで中を調べる。一つの生命反応があった。
人なのか動物なのかはわからない。人だったらどうしよう?僕ら以外の人を見た事は今まで無いのだ。
よく見ると、船団にビーストが気づき、喰らいつこうとしている。奴らに持って行かれてしまうのか。
「飛行物体にビーストが寄生し始めています。中に物資や生命反応がありますが、どうしますか?私は救出したいと思います。このクラスのビーストならシューティングスター一機でもなんとか撃退出来そうです」
「了解。オレもその方向で」
今回の敵はBクラスのビーストなんとか行けるだろう。それには同意する。鋭い爪と大きな尾が少しやっかいだ。何度も旋回をしながら、オメガの銃口に調節する。左の胴体をやられる。鈍い痛みとガソリンの匂いがした。
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