呪い

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彼女との再会をしてから隣に座り、一言も話す事もなく、彼女が落ち着くのを待っている。 何か話しかけるべきだろうか…… 彼女は、とめどなく流れる涙で顔をクシャクシャにさせている。 何も話しかける事ができないまま。 どうして 醜い容姿の俺でも変わらずにいてくれるだろうか? 俺自身は、どうしたいのだろう……? 心の奥の何かつかえた気持ちが引っかかる。 今までと違う迷いの感情に戸惑いながらも、この女を利用すれば、もとの姿に戻れるとどこかで考えている俺もいる。 俺の気持ちが何かにざわついている。 彼女をみれば、変わり果てた俺でも愛してくれているように思える。 あの老人は 「Blueの花ひらくとき呪いはとけ お前は救われるだろう。 本当に心から愛してくれる人が現れたとき そのBlueの花は、愛する心により、花ひらくだろう。」 と花ひらくとき、呪いがとけると言っていたが、その話にはまだ続きがあった…… それは、Blueガーデンという丘へ行けというものだった。 そう言われた時、この街には古くからある伝説のような密かに語り継がれている物語があった事を思い出していた。 本当に現実に起きた事なのか、神話の話なのか、俺が聞いたときも、どうでもいい話で聞き流していた…… ♢ 数年前 「それでね、愛し合う二人がBlueガーデンで気持ちを伝え合うと綺麗な花が咲くんだって。ロマンチックだと思わない?」 女は、俺にベッタリ抱きつきながら、退屈な話をする。 はぁ〜。退屈だ……そんな話どうでもいい。 そろそろ、この女ともさよならだな。 女がくっついてくる横で考えていた。 「ねぇ?ねぇ?じん?聞いてる?」 「ああ……聞いてるよ」 俺は、窓の外を眺めながら、冷たく返事をする。 「私達も今度行こう!」 ニコニコ微笑みながら、俺の顔を覗きこんでくる。 女は俺とキスがしたかったようだけど、無理。 そんな気分じゃない。 「ああ……今度な」 頭をぽんぽんと撫でながら、微笑み、女の顔を俺の胸のあたりに移動させる。 目の前に顔があると、鬱陶しい。 「嬉しい!楽しみだなぁ」 女は、俺の手に指を絡ませながら、嬉しそうに喜んでいる。 数日後、別れるとは知らずに。 ♢ 数年前、そんな出来事があった事を、俺は久しぶりに思い出していた。 あの老人に言われてから、それが神話とかではなく、現実に起きた事が語り継がれてきた話だと変に確信していた。 自然と納得してしまったのだ。 彼女が俺の事を想っているのなら、それはすぐにでも連れて行かなければ。 早く、この姿から解放されたいと俺の中にある荒々しい気持ちが渦巻きだしたのを強く感じる。 早く、彼女を連れて行かなければ! 急に気持ちだけが焦り出す。 「大丈夫か?少しは落ち着いた?」 俺は彼女の背中を摩り、優しい言葉をかける。 「少し、気分転換に外の空気…… 吸いにいこうか……?」 彼女が落ち着く頃には、すっかり夜が深けていた。 早くBlueガーデンに連れて行きたい気持ちを抑えながら彼女に問いかける。 こういう時 彼女は、いつも嫌だとは言わない。 「はい…… 、そうですね…… 少し、」 彼女は、話しだしたかと思うと、急に黙り何かを考えているようだった。 昔の時と違い彼女の表情は少し硬い。 どこか哀愁漂うような複雑な表情をしていて、この気持ちが悟られてしまってるのではないかと、心配になった。 「少し…… 落ち着いてからがいい。あの、お願いがあります…… このお家で二人きりで一日、ゆっくりさせて下さい」 そう言い、俺に笑いかける。 彼女の表情がどこか儚げだった。 俺に会えたのに嬉しくないのか……? 彼女は何を考えていたのか……俺にはわからなかった。 理解しようとしていなかったのかもしれない……
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