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絶望と幸福の間
私は、出逢って助けて貰ったあの日からずっと彼が好きだった。
人を好きになることに
出逢ってからの時間は関係ない。
今、思えば
あの時から好きになっていたんだと思う。
最初は、見つめているだけで良かった……
ずっと
このままで、傍で、見つめていたかった……
♢
「はぁ……」
物思いに老けながら、深いため息が出てしまう。
どんなに
愛して貰えるように
頑張っても……
結局、付き合って私の事を知っていくと
みんな
嫌われて捨てられていく……
急に別れを告げられて何もかも嫌になってくる
私は
幸せになれるのだろうか……
胸にぽっかり穴が空いたように感じる。
今回は、本当に辛い……
好かれるように
嫌われないように
努力した
「もう、生きていくのも苦痛だよ……」
海を眺めながら
私はその海に吸い込まれる感覚に陥っていく。
だんだんと
海が近づいてくる気がしていた。
このままでもいいかも
そのまま自然と身を任せてみることにした
その方が楽に感じたから……
「何、やってるんだよ。しっかりしろ」
私の腕を強く掴む人が目の前にいる
しっかりとした彼の視線は
私に強く突き刺さる。
それが私とじんさんとの出会いだった……
♢
海に入ろうとしていた所をとめられて
とりあえず、落ち着こうと
近くの砂浜に二人で腰をおろし座っていた。
彼の名前は『じん』と言う名前だとその時に話している内にわかった。
「もう、落ち着いた?」
「はい。おちつきました。私……死のうとしてたんですね。ごめんなさい。本当に無意識だったんです……」
「えっ? そうだったんだ。良かった、止めといて。安心だな」
じんさんは、初対面なのに、よく話すな。と思っていたけれど
面白い話をしたり
笑えるようにずっと話してくれていたようだった。
じんさんは、私の突拍子もない言葉にびっくりしているようだったが、ふっと微笑んでいるようにもみえた。
彼のその横顔がとても綺麗で
耳を澄ませば波の音と
塩の香り
夕日に照らされている景色が
オレンジに染まってより一層と
私の心を高鳴らせた。
その後もじんさんは
私の話をしっかり聞いてくれている。
「うんうん」とゆっくり頷きながら
しっかりした眼差しで私を見つめる。
誰も、、
私の事なんて見ていないと思ってたけど
じんさんは何がおきたのか知ろうとしてくれた。
それが私にとって
とても嬉しかったし救われた。
救われた分、この人に何かあった時には力になりたいと思う。
♢
ー数ヶ月後ー
「じんさん、最近忙しそうね!たまには私とも遊んで〜」
「ああ。わかってるよ。ごめんな」
そう言って、ポンポンと頭を撫でてくれる
彼が愛おしくて、いつもドキドキさせられる。
この彼の笑顔がいつも私の心を熱くさせた
恋人として傍に居られなくても構わない……
じんさんにとって
妹みたいな存在だったとしても
どんな存在でも傍にいたかったから。
初めて出会った時から
私はじんさんの近くにいるようにした。
このまま、離れてしまったらどこか遠くへ行ってしまいそうだったから……
彼は、優しいから
嫌だと言えないとわかっていた。
わかっていて、わからないふり
そんな自分が嫌になる。
それに
私のあんな所を見てしまったのだから、きっと少しの事で傷つくと考えちゃうんだろうな。
私って、なんてずるいんだろう
じんさんの傍にいると
私一人のじんさんではないと直ぐにわかった……
じんさんに会いに行くと、いつも違う女の人と一緒にいた。
いつも、手を繋いだり
抱きしめあったりしていて
私は声をかける事ができないことも
何度もあった。
……凄く苦しくなった時もあったけれど、
苦しくなる胸を必死に隠した、
じんさんに嫌がられたくない。
いつも催促して会いたいと伝えると早めに時間を作ってくれたし、じんさんにとって私は他の人と同じかもしれないけれど
私は、じんさんの傍に居られるだけで良かった。
この気持ちは、しまっておこう。
それがこの想いへの決断だった……
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