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和やかに家族で夕食を囲む。家族団らん。母はかなりの心配性で、繰り返し聞いてくる。それとは正反対に父は無関心。 私はそれを嫌がる風でもなく丁寧に答える。父は黙々と食べ、すぐにふらっと行ってしまう。母もまた、父には無関心だった。一体これのどこが“家族団らん”なのだろうと可笑しくなってしまうが――私もまた、無関心であった。 嘘を塗り重ねていくと、罪悪感すら抱かなくなる 夜雨の降る音を聞きながら、先日亡くなった祖母の不思議な話を思い出す。母方の祖母は私の“嘘”に気づいていたのに、それについて何も言わなかった。――まあ都合がいいからいいやと、私もまた何も言うことはなかった。 「――ねぇ露ちゃん。“夏しぐれ”のときはこれを持ってじっとしてなきゃダメよ」 おりがみの、鳥……?  息をのむような美しいブルーモーメントを想わせる青い鳥。空を羽ばたいていく幻想まで抱かせるくらい、それは生命力にあふれていた。 「夏の間は忘れることのないようにね。 夏しぐれに迷い込むのは、あなたのような十代の子たちだけだからねぇ」 祖母の嘘だと決めつけて、真実は聞かなかった。
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