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翌朝雨は上がっていた。雨粒を纏った翡翠の煌きが眩しい。新緑の季節、夏の象徴――瞳を細めながら坂道を下っていく。 近辺には坂道と階段が多く、結構足腰には自信がある。 今日は図書館で感想文を書く本探し。本はいい、周囲から切り離されて没頭できるから。学校では常に読書という名の逃避行をしていた。誰もわざわざ話しかけてこなければ、雑音からも解放される。 坂道の上にはセピア色の小さな図書館があった。片隅には自販機とベンチがあって、ちょっとした休憩場所になっている。そこに、見知らぬ少年が本を読んでいた。 透明感のある子だ。特別目立つ容姿っていうわけでもないのに、いつの間にか目を奪われてしまう。――図書館でも、学校でも、見かけたことない……。妙に存在感のある少年だった。こんな相手なら、ふつう忘れるはずない。 視線に気づいたらしい少年が顔を上げた。琥珀色の瞳がこちらをじっと見つめている。 「――雨」 一瞬何を言われたのか、わからなかった。その後に続けられた言葉の意味など尚更だ。 「気をつけてくださいね」
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