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それだけを言い残すと風のように去っていった。 本を探すという目的で訪れたはずの図書館だったが、適当に一冊抜き取って、それを持って着席する。ページをめくって目を通すものの、肝心の中身は全く頭に入ってこなかった。 雨に気をつけろと忠告をしてきた少年。 「どう気をつければいいのか、教えてくれてもいいのに」 これは半分八つ当たりに近い。理由を教えてくれないことへの。おそらくは自分で考えろということなのだろうが、教えてくれるくらいの親切心があっても罰は当たらないはずだ。 思い当たるのは祖母の――あれは、嘘じゃないの。 「――夏しぐれ」 それは自然に声として出ていた。そして偶然か否か、外から帰ってきた司書が常連であろう女性に愚痴をこぼすのが聞こえた。 「天気予報では晴れって言ってたのに、雨が降ってきちゃって。もー最近こんなのばっかですよ。貸し出し用の傘があるのでよければ使ってくださいね。また降ってくるかもしれませんし……こういうのなんて言うんでしたっけ……あ! “夏しぐれ”」 それは心に衝撃を与えるのに十分過ぎる言葉だった。 ――あの青い鳥……どこへやったんだっけ、綺麗だからなんとなく捨てられなくて。 それから、どこへいったんだった?
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