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厄介な感情
「――――風間GM、本社から外線入ってます」
ぐったりと席に戻った僕に、部署パートの落合さんから声がかかった。
「ありがとう」、ひと声かけて点滅するボタンを押す。「風間です――――」
外線の相手は本社の岸川。同期入社で、現在は財務部のマネージャーをしている人物だ。
そして、僕が社内で唯一気を許している相手。
少し荒んだ気持ちが晴れて、自然と肩の力が抜けた。
「―――お疲れ、岸川」
『おう。そっちこそお疲れ。―――――”また”、連れ込まれてたんだって?』
あいつの人懐っこい顔が、からかう様にくしゃりと崩れて笑った様子が、受話器越しにも伝わってくる。
僕はむぅ、と顔を顰め、若干声を低く答える。
「―――その件に関しては後でメールする。・・・さすがに今回のはキツイ」
『週明けの定例会で、たぶんその業務について役員たちが話してた。――――随分カンタンに考えているらしいが・・・』
「は・・・?――――冗談じゃないっ。簡単なわけないだろう!・・・あ、いや、ごめん。いいんだ。これが僕の仕事だからな・・・」
『珍しいな。聖が声を荒げるなんて。――――あぁ、そうだ。俺さ、明日からそっちに監査で入るから、また1週間、間借りさせてくんない?』
「えっ!岸川、こっちに来るのか?――――ウチはいつ来てもらっても構わない。・・・ってことは、一週間はひとり飲みしなくていいんだな」
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